
さて,うつ病に関わる自殺についてですが,次の図を見ながら説明します.近年の日本では,リストラ大不況で中高年の自殺者増加がみられました.精神的ストレスから体調を崩して内科に受診したが,一向によくならない.そのうち,イライラなどで気分が滅入ってくる.こういった時代背景のもとでも,内科などにかかった患者が,精神科内容の適切な医療を受けられるのは50%程度だそうです.この例が全てではありませんが,本人や周りが気づかず図のうつ病の発病初期(ピンク色)に,自殺してしまうケースが多いそうです.
うつ病が深刻になり低迷期(青色)に入ると,自殺念慮を抱いても行動力が低下していて自殺を実行することはあまりありません.筆者もそうでしたが,ドン底の時はむしろ本気で死にたいのです.朦朧とした頭で,殺してくれとまで言いたくなるのです.ほとんど精神は死んでいる状態なのです.けれども気だるくて,体も重く感じて何もできる時期ではありませんでした.
筆者が実行に移したのは,回復期(緑色)にあたるときでした(→4月22日).また多くの人が回復期に自殺している事実もあります.筆者にとってのきっかけは,ほんの些細なことでした.回復期とはいえ,うつ病患者の精神や感情は大きな振れ幅の起伏があります.元気な日の次の日,些細なことでもドン底気分になるのです.けれども,思っているより体は軽い...死にたいと思い込んで,そこに具合よく首を絞められそうな紐が目に入ってくると,ふつふつと「死にたい」という感情が脳を支配して,実行に移してしまうのです(あくまで筆者の場合ですが...それに今ではきっかけになった事なんて気になりません).
そして再燃・再発初期(ピンク色)にも回復期同様のことが言えます.ただ,このときは治療経験があるわけですから,自分で溜め込まないよう主治医や家族・周りの大人に,自分の行動や言動を注意深く見守ってもらうことが,自殺予防の早道だと思います.筆者も家族に支えられて,現在こうして生きています.生きているって,悪いこともあるけれど,いいこともあるもんですよ.
筆者は前日の記事にある「パキシル」ではなくSNRIの「トレドミン」を使用していました.それに三環系や他の抗うつ薬の場合でも自殺が防げなかった例はあるようです.今日言いたかったのは,自殺が薬の作用・副作用のために起こるのではなく, 「自殺念慮があり」,「初期・回復期で実行できるほどの体力があり」,「たまたま一人になったとき,一人暮らしをしているなど孤独な場合」,と条件が一致して実行してしまう,という発病・治療過程の盲点にあることです.自殺を防ぐためには,医師と患者の家族などの周りの人が,患者の言動や行動を注意深く観察する必要があります.また,かかりつけ医が患者(家族含め)さんとのつながりを深めること・家庭内や患者自身で防げない場合は入院を勧めることなど,精神科系の学会でもこの問題に真剣に取り組んでいるようです.
なお,2つ目に自殺を実行するには体力がいると述べましたが,前日のアメリカの結果で若者が自殺衝動を起こしやすいのは,若気の至りではありませんが,短絡的になりやすい年頃で,行き場の無いエネルギーを自殺という形で放出しやすいためではないかと,筆者は独断で捉えています.なお,他に情報・意見のある方は,コメント・トラックバックをご活用ください.